「りんごのひとりごと」に耳を澄ます

スーパーに行くと色んな果物が並んでいる。でも真っ赤なりんごがいっぱい並んでいる姿を見かけるとその前で足は止まる。そして今日もひとつだけ買ってきてしまう。
私はりんごが大好き。特に好きなのは小振りの紅玉。ちょっとすっぱい紅玉の真っ赤な色を見ていると思い出す歌がある。
クインテットのCD「you gotta Quintet〜songs〜」にも収録されている、

『りんごのひとりごと』(作詞:武内俊子 作曲:河村光陽)

りんごの気持ちになって書かれた優しい詞。作詞をされた武内俊子さんは1905年(明治38年)生まれの童謡詩人、童謡作詞家。女性の社会進出が困難な昭和初期にあって、四人の子の母でありながら育児と創作活動を両立させ、優れた作品を数多く世に送り出した。1945年(昭和20年)に死去。享年40歳。
「りんごのひとりごと」は34歳の入院中、見舞いに贈られたりんごから発想して書いた詞。武内俊子作詞、河村光陽作曲の作品では他に「かもめの水兵さん」などの童謡が数多くある。

歌詞の3番で(※CDに収録されているのは2番まで)、りんごは故郷の育ててくれたお爺さんのことを思い出している。お爺さんはもう私(りんご)のことは忘れたのかしら…?そんなりんごのちいさなちいさな「ひとりごと」が聞こえてきそうで、真っ赤なりんごがとてもいとおしく思えてくる。
よく行くスーパーのりんご売り場では今日もいつものお兄さんが特売のりんごたちをきれいに並べてくれている。このりんごたちに青いお空は見えないけれど、それでも故郷の空を覚えているのかな?りんごたちに「恋しいですか?」と聞いてみたくなる。
寒い北の国に生まれたりんごたち。輸送に汽車を使う時代は終わり、現在はもっと効率の良い方法で私達の元にやって来るのでしょう。
でも「ひとりごと」を語っていそうな、そんな可愛らしさは今も変わらない。

【りんご畑のお爺さん】

NHK総合テレビで放送中の「プロフェッショナル 仕事の流儀」
2006年12月7日の放送でりんご農家・木村秋則さんの科学的に合成された農薬や肥料を一切使わないりんごづくりのことをやっていた。
りんごづくりの主人公はりんごと言う木村さん。大きな声でよく笑い、愛情溢れるとても魅力的な方だった。歌の中のりんごが思い出している「お爺さん」はこの木村さんみたいな人だったんじゃないかな。