17年ぶりの音に会いに。〜N響 in 梅田芸術劇場〜

一昨日の8月28日、NHK交響楽団の演奏会を聴きに梅田芸術劇場まで行ってきました。
指揮はジェームズ・ジャッド氏。
注目のプログラムは、先日行われたチャイコフスキー国際コンクール、ヴァイオリン部門で見事優勝した神尾真由子さんをヴァイオリンに迎えての、
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲二長調op.35です。
日本人の優勝は1990年の諏訪内晶子さんに次ぐ史上2人目。17年ぶりの快挙とあって、彼女が登場する前から客席は期待と興奮で満ちているようでした。

そしてコンクール優勝時と同じピンクのドレスを着た神尾さんが登場。観客は大きな拍手で迎えます。彼女は堂々とした歩みで、一歩一歩舞台の真ん中へと進みます。
静かに第一楽章が始まり、彼女のストラディヴァリウスが音を放った瞬間、その体全体から溢れ出るような音に、一瞬、ここがコンサートホールであることを忘れてしまいました。
どこか宇宙へと放り出されたような、そんな気がして。ああ、これが17年ぶりの音なんだな…と思いながら。
第一楽章が終わったところで、すでに客席から拍手と、あちらこちらから「ブラボー!」の声が上がります。まだあどけなさが残る笑顔でお辞儀をする彼女。そんな表情にちょっとなごまされ、そして曲は第二楽章、途切れることなく第三楽章へ。

曲が終わり、客席からの拍手喝采と「ブラボー!」の声に何度もカーテンコールで応える神尾さん。そんな彼女を見ながら、私は大きな満足感を感じていました。それはまた1人、見守り続けたいアーティストが増えた瞬間でもありました。

ホールの外に出ると時間はもう10時近く。空にはぽっかりと大きなお月様。そうだ、今日は6年ぶりの皆既月食だったんだな…。お月様ゴメンネ。今夜、私は17年ぶりの栄冠に輝いた音を選びました。